ドイツ・エアフルト社を訪ねて

写真を整理していたところ、ドイツの壁紙メーカー「ERFURT(エアフルト)社」を見学した時の写真が出てきました。

エアフルト社があるのは、ドイツ西部の都市・ヴッパータール。1827年創業の、長い歴史を持つ製紙メーカーです。

エアフルト社の工場は、緑に囲まれたヴッパー川の流れに沿うように建っていました。

歴史を感じるレンガ造りの建物と、すぐそばを流れる川の風景がとても美しく、今も印象に残っています。

エアフルト社は1864年に、「Rauhfaser(ラウファーザー)」と呼ばれる壁紙を開発しました。

ラウファーザーは、再生紙に細かな木片を漉き込んだ、塗装して仕上げるための壁紙です。木片が生み出す自然な凹凸があり、塗装すると光の当たり方によってやわらかな陰影が生まれます。

日本では、エアフルト社で製造された塗装用壁紙が「ルナファーザー」や「オガファーザー」の名称で輸入・販売されています。ラウファーザーはドイツで使われている呼称、ルナファーザーはエアフルト社製品の日本での商品名ということになります。


紙と木片から作られた壁紙

一般的なビニールクロスの主原料がPVC(塩化ビニル)であるのに対し、エアフルト社のラウファーザーは、紙と細かな木片(木のチップ)を主な原料としています。

PVCや可塑剤を使用しておらず、製造時にホルムアルデヒドや重金属化合物も添加されていません。そのため、ビニール素材に由来する頭が痛くなるような臭いがなく、室内環境に配慮した壁紙となっています。


「呼吸する壁紙」と呼ばれる理由

紙壁紙は、よく「呼吸する壁紙」と表現されます。これは、紙や木片に通気性・透湿性があることを、分かりやすく表した言葉です。エアフルト社も、ラウファーザーの特長として、通気性と湿度調整機能を挙げています。


塗り替えながら長く使う

ルナファーザーは、貼った後に塗装をして仕上げる壁紙です。汚れたり、部屋の雰囲気を変えたくなったりした時には、壁紙を剥がさず、その上から塗り替えることができます。

カーテンや椅子の張り地を替えるのに合わせて、壁の色も変えていく。白からベージュへ、ベージュからグレーや深いグリーンへ。壁紙を貼って完成ではなく、暮らしに合わせて手を加えながら長く使えることが、大きな魅力です。


壁紙を選ぶ時は、廃棄する時のことまで

ビニールクロスには、価格、施工性、汚れにくさ、デザインの豊富さなど、多くの利点があります。一方、主原料となるPVCは塩素を含むプラスチックです。PVCを含む廃棄物を不適切な条件で燃焼させた場合、ダイオキシン類が生成する可能性があります。

壁材を選ぶ時には、価格だけでなく将来の改装や廃棄まで考えてみることも大切です。

紙壁紙も、糊や塗料によって最終的な性質や処分方法が変わります。PVCや可塑剤を使用していない壁紙を選び、剥がさずに塗り替えて長く使うことは、改装時に発生する廃材を減らす一つの方法になります。


健康や環境に配慮した壁の仕上げ

健康や環境への配慮、そして廃材を抑えながら長く楽しめる壁を考えたとき、私たちはドライウォール下地の上に直接塗装する仕上げ、または紙壁紙を貼って塗装する仕上げがよいという結論に至りました。

建物は、気温や湿度の変化、木材の乾燥、地震などの影響によって少しずつ動くため、壁の継ぎ目にひび割れが生じることがあります。そこで、表面の仕上げ材だけでなく、その下地を丁寧につくることが重要になります。

ドライウォール工法では、石膏ボードの継ぎ目にジョイントテープを入れ、パテを幅広く重ねて平滑に仕上げます。継ぎ目を面として一体化させることで、ひび割れを抑え、塗装の美しさを保ちやすくします。

壁紙を貼らずに直接塗装する場合はもちろん、ラウファーザーなどの紙壁紙を施工する場合にも、ドライウォール工法による下地づくりがおすすめです。自然な素材感、塗装ならではの色の奥行き、将来のメンテナンスや廃棄まで含めて考えると、選択肢の一つとしてもっと知られてほしい仕上げ方です。


ヴッパータールの「逆さの列車」

ヴッパータールで、もう一つ忘れられないのが、頭上を走る不思議な列車です。これは、1901年に開業した「ヴッパータール空中鉄道(Schwebebahn/シュヴェーベバーン)」という懸垂式モノレールです。

細長い谷に沿って市街地が発展したヴッパータールでは、地上に鉄道を通す場所が限られていたため、ヴッパー川の上の空間を利用する方法が採用されました。車両が一本のレールにぶら下がって走る姿は、地上から見ると、まるで逆さまの列車のようです。

全長は13.3km、駅は20か所。大部分がヴッパー川の上を走り、端から端までは約30分です。珍しい観光名所であると同時に、現在も多くの市民が利用する日常の交通機関です。


長く使い、手を加えながら楽しむ

1827年から紙を作り続けるエアフルト社、1864年に生まれたラウファーザー、そして1901年から走り続ける空中鉄道。古いものでも手を加え、時代に合わせながら使い続ける。そんな考え方は、住まいづくりにもつながっているように思います。

壁もカーテンも家具も、暮らしとともに好みや必要な機能が変わります。

最初に選ぶ時から、将来の塗り替えや張り替え、廃棄のことまで少しだけ考えてみる。健康や環境に配慮し、壁紙を張り替える際の廃材を抑えながら、塗り替えて長く楽しむ。そんな壁との付き合い方はいかがでしょうか。

塗り壁・モールテックス施工|FABRIC

左官工事20年。新潟市で内装塗り壁工事、外壁塗り壁工事、ドライウォール下地、塗装仕上げ、モールテックス・ビールストーン施工などを行っています。素材の質感を活かし、空間に表情をつくります。